宝塚

宝塚音楽学校の「改善」と報道

ハラスメントと加害と被害、暴力の構造について、一生懸命お話しした最後に、「なにか舞台で役に立ったことはありませんか?」と聞かれてしまう。

私はこのとんちんかんさ、伝わらなさと、一生戦っていこうと思う。

「ですから『今回、学校側がこうした不文律は舞台人の育成に不要と判断』したことは、大きな一歩なんです。」と、お伝えしたが、はたして伝わっただろうか?

どうして何日も寝かせないことが、廊下を何時間も意味なく歩かせ続けることが、コンクリートに立て膝で泣きながら謝らせ続けることが、何日もお風呂に入れないことが、大人数に囲まれて人前で恫喝されることが、寒さの中、直立不動で立たされ続けることが、舞台で役に立つと思えるのだろうか?(仮に役に立ったとして、人間にそんなことをしていいはずがない。)

睡眠、食事、衛生、適切な医療、その上でレッスンすることが、舞台人の育成に必要だと、どうして思わないのだろう?

スターの誰かもこんなひどいことをしていた!とか、そういうことではなく、若い女性たちの人権が、伝統の名の下に守られず、放置されてきたことが問題。

短期間のうちに、「私の部活もそうでした」「私もこんな経験があります」と、たくさんの声が寄せられました。

宝塚だけではありません。もういい加減、人を暴力で支配することを、やめなければなりません。

お風呂場に水滴を残してはいけなかったとか、ひとりが傘を忘れたら全員が使ってはいけなかったとか、そうしたことは、枝葉末節なことで、本質的な問題ではありません。

問題は、人が人を暴力で支配し、加害と被害が連鎖することです。

傘がさせるようになったとして、阪急電車にお辞儀をしなくてよくなったとして、それは「改善」ではありません。

問題の本質に耳を傾けようとしない周囲も、私はとてもこわいです。

ABOUT ME
東 小雪
◯公認心理師 / LGBTアクティビスト / 元タカラジェンヌ◯東京ディズニーシーで初の同性結婚式を挙げ、日本初の同性パートナーシップ証明書を取得し話題に。LGBT・女性の生き方などのテーマを中心に講演やメディアに多数出演。著書『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』『レズビアン的結婚生活』等 現在、フォトジャーナリスト安田菜津紀とのYouTube番組「生きづらいあなたへ」を配信中。

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